2020 年 26 巻 2 号 p. 159-163
症例は50歳代男性.高度肥満と2型糖尿病の診断で,他院で腹腔鏡下スリーブ状胃切術(laparoscopic sleeve gastrectomy以下LSG)を受けた.術中に,腹腔鏡下での観察所見から脂肪性肝硬変症であることが判明した.術後11日目に腹痛が出現し,術後19日目に門脈腸間膜静脈血栓症(porto-mesenteric vein thrombosis以下PMVT)と診断され,当院に転院となった.ダナパロイド3000単位/日を7日間,アンチトロンビン1500単位/日を6日間投与し加療したところ腹痛は消失し,肝内の門脈血流は改善傾向となった.リバーロキサバンの内服に切り替え,外来経過観察したところ術後10か月後の造影CTでは門脈血栓は消失したが,上腸間膜静脈血栓は血栓のある血管自体は退縮し,側副血行路ができていた.以後抗凝固療法は中止したが,PMVTは再発しなかった.アンチトロンビンの低下を早期に確認し,ダナパロイドとアンチトロンビンの併用療法およびリバーロキサバンによる維持療法が,PMVTの治療および再発抑制に対して有用であったと思われた.