日本門脈圧亢進症学会雑誌
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26 巻, 2 号
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Editorial
総説
  • 髙 昌良, 上村 顕也, 名古屋拓郎 , 酒井 規裕, 坂牧 僚, 横尾 健, 寺井 崇二
    2020 年 26 巻 2 号 p. 143-146
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/12/28
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    【目的】非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease, NAFLD)は肝不全の一病態として重要な治療対象である.これまでに我々は肝障害時の肝再生に自律神経を介した消化管ホルモンの活性化の重要性を明らかにした.本研究では,NAFLDモデルマウスを対象として,その病態への神経ネットワークの関与および治療対象としての可能性を検討することを目的とした.【方法】NAFLDモデルマウスとして,コリン欠乏・メチオニン減量(CDAA)食給餌モデルと高脂肪食(HFD)給餌モデルを対象として,肝臓からの求心性内臓神経,迷走神経肝臓枝の遮断を行い,消化管ホルモン,腸内細菌叢への影響を評価した.【成績】CDAA食給餌モデルで胃からのグレリン分泌の活性化を認めたが,神経遮断により抑制され,NAFLDの進行抑制効果を認めた.また,両モデルで神経遮断により腸内細菌叢の構成が変化した.【結語】神経ネットワークへの介入が消化管ホルモン,腸内細菌叢に影響を与え,NAFLDの進行を抑制することが明らかとなった.

原著
  • 北川 翔
    2020 年 26 巻 2 号 p. 147-151
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    当科で経験した結腸静脈瘤6例を対象とし,結腸静脈瘤の存在診断,結腸静脈瘤出血の内視鏡所見,結腸静脈瘤に対する治療に焦点をあて後方視的に検討した.造影CTでは門脈系の閉塞を全例で認めたが,明らかな結腸静脈瘤を指摘し得たのは2例のみで,残り4例はthin slice CTで推察した血行動態をもとに内視鏡検査にて微細な結腸静脈瘤の所見を確認し得た.内視鏡観察を行った5例中4例で静脈瘤の破綻部を示唆するred dot signの所見があり,これら4例中3例で内視鏡的静脈瘤結紮術,1例で膵体尾部切除術が施行された.門脈系の閉塞を伴う下部消化管出血では結腸静脈瘤の存在を考慮する必要があり,その治療として内視鏡的静脈瘤結紮術が有効であった.

症例報告
  • 近森 文夫, 河島 孝彦
    2020 年 26 巻 2 号 p. 152-158
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    症例は72歳男性.4年前食道胃静脈瘤出血をPSE, PTO, EISLにて加療後門脈血栓をきたし近医と併診していた.4か月前のCTで脾腫残存と膀胱周囲静脈瘤を確認していた.1か月前,膀胱癌に対し経尿道的膀胱腫瘍摘出術を受けたが,術後腹水増量し利尿剤を増量した.その後脱水・腎障害を来し利尿剤中止.近医入院し点滴加療を受けていたが,吐血し内視鏡にて潰瘍を認め止血.その翌日より昏睡・痙攣重積状態となり当院に搬送された.まず門脈圧低下と肝動脈血流増加を目的にPSEを施行.ICU管理し,高NH3血症にはBCAA,ラクツロース,リファキシミンを投与.痙攣重積にはチアミラール持続静注・人工呼吸器管理した.脱水補正に伴い腹水増加し利尿剤を再開.第15病日にNH3は低下し意識レベルも改善.約1か月の経過で脳症はレベルIまで軽快し療養目的に近医に転院した.痙攣重積を伴う肝性昏睡に対しても,血液検査や画像所見を総合し,生存の可能性があれば集中治療を行うことが救命につながるものと思われた.

  • 竹村 弘司, 中山 聡, 村島 直哉
    2020 年 26 巻 2 号 p. 159-163
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    症例は50歳代男性.高度肥満と2型糖尿病の診断で,他院で腹腔鏡下スリーブ状胃切術(laparoscopic sleeve gastrectomy以下LSG)を受けた.術中に,腹腔鏡下での観察所見から脂肪性肝硬変症であることが判明した.術後11日目に腹痛が出現し,術後19日目に門脈腸間膜静脈血栓症(porto-mesenteric vein thrombosis以下PMVT)と診断され,当院に転院となった.ダナパロイド3000単位/日を7日間,アンチトロンビン1500単位/日を6日間投与し加療したところ腹痛は消失し,肝内の門脈血流は改善傾向となった.リバーロキサバンの内服に切り替え,外来経過観察したところ術後10か月後の造影CTでは門脈血栓は消失したが,上腸間膜静脈血栓は血栓のある血管自体は退縮し,側副血行路ができていた.以後抗凝固療法は中止したが,PMVTは再発しなかった.アンチトロンビンの低下を早期に確認し,ダナパロイドとアンチトロンビンの併用療法およびリバーロキサバンによる維持療法が,PMVTの治療および再発抑制に対して有用であったと思われた.

  • 北川 翔
    2020 年 26 巻 2 号 p. 164-166
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    68歳女性.C型肝硬変,門脈血栓症を背景とした上行結腸静脈瘤からの出血に対し,内視鏡的静脈瘤結紮術を行い,出血点の結紮部にのみwhite ball appearanceを認め止血に成功した.食道以外の消化管静脈瘤についてはwhite ball appearanceの報告はないが,自験例からは結腸静脈瘤においてもwhite ball appearanceは出血点の有効な結紮を示す内視鏡所見と考えられ,これまでに報告のない新しい知見と考え報告する.

  • 重久 友理子, 近森 文夫
    2020 年 26 巻 2 号 p. 167-172
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    症例は75歳男性.腹壁瘢痕ヘルニアに対するメッシュ修復術後門脈圧亢進症性胃症で吐血し腹壁哆開,感染を合併.その後創部出血を繰り返しメッシュ除去術を試みるも,癒着と出血で全摘出不可能であった.脾機能亢進に対し部分的脾動脈塞栓術(PSE)を施行.その後創部は瘻孔化したが出血を繰り返した.CTで創部静脈瘤と側副血行路発達を認め,浅腹壁静脈より逆行性経静脈的塞栓術を試みるも不可能で,α-cyanoacrylate monomer(CA)-Lipiodol瘻孔内注入やエコー下経皮的直接穿刺塞栓術を施行した.しかし再出血を繰り返し供血路の制御が必要であり経皮経肝静脈瘤塞栓術(PTO)を施行,供血腸間膜静脈分枝にCAを注入した.術後CTで供血静脈から腹壁静脈瘤へのCAの充填を確認した.難治性術後腹壁創部静脈瘤出血に対しPSE,エコー下経皮的直接穿刺塞栓術,PTOによる集学的治療が有効と思われた.

短報
  • 坂井 佳世, 久保川 賢, 長田 繁樹, 木村 勇祐, 佐藤 孝生, 宮原 翔仁, 梅北 慎也, 赤星 和也
    2020 年 26 巻 2 号 p. 173-176
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    食道静脈瘤の硬化療法の際に鎮痙剤(ブチルスコポラミン臭化物:ブスコパン®,サノフィ株式会社)を持続静脈内投与することによる,食道蠕動抑制効果について検討した.2016年6月から2018年6月までに予防的に硬化療法を行った24例を対象とした.ブスコパンの静脈注射群(静注群)10例と持続静脈内投与群(持続投与群)14例の2群に分けて患者背景,穿刺針の固定時間,治療所要時間,静脈瘤・供血路描出率,薬剤使用量などについて前向きに比較検討を行った.なお,検討期間内では当初計画した必要症例数に達しておらずサンプルサイズも小さいことから中間解析の報告であり,主要評価項目である穿刺針の固定時間は両群間において有意差を認めない結果となった.結果として,両群とも合併症は認めなかったが心拍数増加率は静注群で有意に高値を示しており(p=0.04),今後も症例の蓄積が望まれるがブスコパンの持続静脈内投与は安全に施行できることがわかった.

テクニカルレポート
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