日本門脈圧亢進症学会雑誌
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症例報告
肝性昏睡・痙攣重積状態となった門脈血栓・膀胱周囲静脈瘤合併アルコール性肝硬変の1救命例
近森 文夫河島 孝彦
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2020 年 26 巻 2 号 p. 152-158

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抄録

症例は72歳男性.4年前食道胃静脈瘤出血をPSE, PTO, EISLにて加療後門脈血栓をきたし近医と併診していた.4か月前のCTで脾腫残存と膀胱周囲静脈瘤を確認していた.1か月前,膀胱癌に対し経尿道的膀胱腫瘍摘出術を受けたが,術後腹水増量し利尿剤を増量した.その後脱水・腎障害を来し利尿剤中止.近医入院し点滴加療を受けていたが,吐血し内視鏡にて潰瘍を認め止血.その翌日より昏睡・痙攣重積状態となり当院に搬送された.まず門脈圧低下と肝動脈血流増加を目的にPSEを施行.ICU管理し,高NH3血症にはBCAA,ラクツロース,リファキシミンを投与.痙攣重積にはチアミラール持続静注・人工呼吸器管理した.脱水補正に伴い腹水増加し利尿剤を再開.第15病日にNH3は低下し意識レベルも改善.約1か月の経過で脳症はレベルIまで軽快し療養目的に近医に転院した.痙攣重積を伴う肝性昏睡に対しても,血液検査や画像所見を総合し,生存の可能性があれば集中治療を行うことが救命につながるものと思われた.

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© 2020 日本門脈圧亢進症学会
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