2022 年 28 巻 1 号 p. 35-41
腹水濾過濃縮再静注法(CART)における腹水排液後の循環不全に起因した有害事象についてリスク因子解析を行った.肝性腹水に対するCART 20例(延べ61回)を対象とし,有害事象群4例(急性腎障害2,肝性脳症2)と無事故群16例に分け,2群間で患者背景や治療状況,検査値など各因子の比較を行った.単変量解析にてBUN(p=0.031)と,eGFR(p=0.044)に有意差を認め,多変量解析では有害事象発生に最も関与する独立危険因子はBUNであった(95%CI=1.012-1.272;p=0.031).BUNとeGFRにはスピアマン順位相関係数で有意な相関(p=0.007)があり,有害事象群4例中3例はBUN 30以上,eGFR 30未満の範囲に含まれ,これをリスク予測因子とするのが妥当と考えられた.該当する例では事前の輸液やアルブミン投与など循環不全の予防に努めるべきである.