日本門脈圧亢進症学会雑誌
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症例報告
貫通静脈を伴う難治性食道静脈瘤に対して経回結腸静脈的塞栓術(TIO)が奏功した1例
東 哲生古田 陽輝直江 秀昭田村 吉高池田 理嶋田 圭太日比 泰造佐々木 裕田中 靖人
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2022 年 28 巻 1 号 p. 42-47

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抄録

症例は50歳男性.C型肝硬変に伴う肝細胞癌に対して,生体肝移植が施行された.5年後の上部消化管内視鏡検査にて,食道静脈瘤(Ls,F2,Cb,RC0)と胃静脈瘤(Lg-c,F2,Cw,RC0)を認めた.超音波内視鏡検査(endoscopic ultrasonography:EUS)では貫通静脈を伴っており,破裂予防として,内視鏡的静脈瘤結紮術(endoscopic variceal ligation:EVL)および内視鏡的硬化療法(endoscopic injection sclerotherapy:EIS)にて加療した.その後も貫通静脈(perforating vein:PV)を認めた部位に一致して静脈瘤は残存し,破裂を来した.EVLにて止血を得たが静脈瘤は消失せず,新たに難治性の門脈血栓も形成したことから再破裂する可能性が高い状態であった.内視鏡的治療による静脈瘤の制御は困難と判断し,血管内治療を行う方針とした.経皮経肝および経内頚静脈からのアプローチは困難であったため,経回結腸静脈的塞栓術(trans-ileocolic vein obliteration:TIO)を行った.術後静脈瘤は消退し,2年後も再発なく経過している.近年は内視鏡治療の発達によりTIOの機会は減少しているが,本症例のように門脈血栓を有し,内視鏡的治療に抵抗性の難治性食道静脈瘤に対して有用と考えられた.

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© 2022 日本門脈圧亢進症学会
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