2024 年 30 巻 2 号 p. 169-173
患者は60歳代女性.原因不明の肝硬変で通院中であった.2年前に直腸静脈瘤出血に対する内視鏡的硬化療法を施行した.その後も肛門外に突出する静脈瘤を認め,徐々に肛門部痛が増悪したため,治療予定とした.肛門外の静脈瘤は下腸間膜静脈から直腸内の静脈瘤を介して供血され,内腸骨静脈を排血路としていた.注腸造影用バルーンを用いて供血路側の静脈瘤を閉塞しながら肛門外静脈瘤を目視下に穿刺し,5% ethanolamine oleate with iopamidolを注入した.治療後には肉眼的に静脈瘤の消退を認めるとともに肛門部痛も改善した.本症例はバルーンで供血路側を閉塞して,目視下に肛門外静脈瘤を穿刺して硬化療法を行った初めての報告である.肛門外静脈瘤を含む直腸静脈瘤の治療法に関する明確なエビデンスは確立されていないが,治療目的に応じて症例ごとに工夫をすることで有効な対処が可能な場合がある.