2024 年 30 巻 2 号 p. 174-181
慢性肝疾患を背景とする門脈圧亢進症例の腫大した脾の辺縁部には超音波ドプラ法で“diffuse A-V shunt”が認められることがある.この“diffuse A-V shunt”の経時的変化や門脈圧亢進症との関連性については不詳である.著者らは“diffuse A-V shunt”が認められた門脈圧亢進症のうち2回以上の超音波検査が行われ,腹水の程度との関係を経時的に観察し得た11例を経験し興味ある知見を得た.症例はウイルス性肝炎や特発性門脈圧亢進症等を含む慢性肝疾患である.腹水が増加した2例,不変であった1例,徐々に減少した3例はその変化に対応してdiffuse A-V shuntの程度(数量やシャント血流速度)はそれぞれ増大,不変,軽減した.腹水が消失した3例を含め,11例中計6例が経過観察中にA-V shuntは消失した.脾の“diffuse A-V shunt”は,経過とともにその程度は変遷し,消失することもある可逆的現象であった.“diffuse A-V shunt”の程度は腹水量と関連しており,門脈圧亢進症の原因となっているが,門脈圧亢進症による結果とも考えられた.