2025 年 31 巻 2 号 p. 174-178
症例は66歳男性.アルコール性肝障害などで前医を通院していた.X-2年11月ごろより腹部膨満感,下腿浮腫を自覚し,X-2年12月当科紹介受診となった.アルコール性肝硬変による肝性腹水と診断し,フロセミド・アルダクトンを開始したが,腹水量は減少せず,週1回程度の腹水穿刺排液を要した.トルバプタンの導入を行ったが,穿刺排液の回数は減少せず,腎機障害も出現したため,X年1月に腹水コントロール目的で入院となった.補液や多量アルブミン投与にも関わらず,腎機能障害は改善せず,穿刺回数は週2,3回に及んだ.そこで第77病日に腹腔-静脈シャントの造設を行った.シャント造設後,腎機能障害は改善し,腹水穿刺やアルブミン製剤の投与を行うことなく,自宅退院となった.今回,内科的治療に奏功しなかった難治性腹水に対して腹腔-静脈シャントの造設を行い,コントロール良好となった症例を経験したため報告する.