日本門脈圧亢進症学会雑誌
Online ISSN : 2186-6376
Print ISSN : 1344-8447
ISSN-L : 1344-8447
最新号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
総説
  • 清水 哲也, 吉田 寛, 谷合 信彦, 松下 晃, 吉岡 正人, 川野 陽一, 上田 純志, 室川 剛廣, 大野 崇, 吉森 大悟, 春名 ...
    2025 年31 巻2 号 p. 131-137
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/11
    ジャーナル フリー

    肝外門脈閉塞症(EHO)の原因としては,血管形成異常や骨髄増殖性腫瘍(MPN),抗リン脂質抗体症候群などがあるが,最も多い原因はMPNとされ約30%を占める.MPNにはJAK2CALRMPLなどの遺伝子異常があり,血球の無秩序な増殖を来すともに血栓化の原因となっている.JAK2V617F変異は,MPNである真性多血症の90%,本態性血小板血症や骨髄線維症の60%に認められ,本遺伝子変異の確認は背景にあるMPNを見落とさない方策となりうる.門脈圧亢進症による脾機能亢進症にも関わらず白血球・血小板数低下のないEHOはMPNを合併している可能性が高い.EHOの予後には,消化管静脈瘤の出血コントロールが重要とされる.しかしながら,MPNを合併したEHOでは,繰り返す消化管出血と血栓性合併症のジレンマに直面することとなり,確実な出血管理と抗血栓療法を行うことが肝要である.

原著
  • 高橋 一広, 蒲原 知斗, 五所 正彦, 中橋 宏充, 鈴木 貴友, 立澤 麻衣子, 小川 光一, 明石 義正, 土井 愛美, 下村 治, ...
    2025 年31 巻2 号 p. 138-146
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/11
    ジャーナル フリー

    【背景】ALBI scoreと肝切除率を組み合わせて肝切除後重症肝不全(PHLF)を予測するheatmapを開発し,有用性を検討した.【方法】当院で肝切除を受けた原発性肝癌患者524例を対象とした.肝切除率を(切除検体容積─腫瘍容積)/全機能的肝容積×100とした.PHLFをISGLS Grade B/Cとし,ALBI scoreと肝切除率でheatmapを作成した.【結果】56例が重症PHLFを発症した.多変量解析では,ALBI scoreと肝切除率がPHLFの独立寄与因子となった.Heatmapは幕内基準より切除適応を13%増加した.Heatmapの陽性適中率は幕内基準と同等であったが(90.9% vs 93.4%),陰性的中率はheatmapで高値であった(58.8% vs 32.9%).【結論】本heatmapは,手術適応や術前肝予備能に基づく術式の決定に有用であると考えられた.

  • 村上 脩斗, 西田 晨也, 今城 健人, 國分 茂博, 瀧川 政和
    2025 年31 巻2 号 p. 147-153
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/11
    ジャーナル フリー

    【背景】部分的脾動脈塞栓術(PSE)ではさまざまな塞栓物質が用いられるが,施設ごとに使用法が異なる.当院では2021年9月より細片化法に加えてtorpedo法を導入した.torpedo法の影響は十分に検討されていない.本研究の目的は,両方法の周術期経過を比較し特性を探ることである.【対象】当院でPSEを施行した18例(torpedo法11例,細片化法7例).【方法】手術時間および周術期の血液検査値を比較した.【結果】torpedo法は細片化法に比べ手術時間が短縮できる可能性が考えられた.術後1日目ではWBC,CRPに有意差はなかったが,術後1週間でのCRPはtorpedo群の方が有意に高かった.一方,発熱や疼痛には差を認なかった.【考察】torpedo法は比較的根部での塞栓が可能で,手術時間の短縮につながる可能性がある.【結語】torpedo法はPSEにおいて手術時間の短縮に有用と考えられる.

症例報告
  • 西口 遼平, 古市 好宏, 島川 武, 浅香 晋一, 藤原 智之, 小林 史怜, 佐藤 浩一郎, 塩沢 俊一
    2025 年31 巻2 号 p. 154-159
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/11
    ジャーナル フリー

    本症例は56歳女性,断酒困難なアルコール性肝硬変に伴う難治性食道静脈瘤破裂の1例である.内視鏡的静脈瘤硬化療法(endoscopic injection sclerotherapy: EIS)および内視鏡的静脈瘤結紮術(endoscopic variceal ligation: EVL)を繰り返し施行したが,門脈圧亢進と瘢痕形成を背景に再出血を繰り返した.SBチューブによる圧迫止血後,EIS/EVL併用療法を施行し,最終的に撲滅結紮法を追加することで止血を得たが,根本的な管理には門脈圧のコントロールとともに断酒が不可欠であった.本症例を通じて,内視鏡的治療の最適化と同時に,断酒支援を含めた包括的な管理が重要であることを学んだ.本報告では,難治性食道静脈瘤破裂に対する治療戦略を示し,断酒支援の重要性について考察する.

  • 清水 孝夫, 辻 邦彦, 高橋 文也, 田中 一成, 松居 剛志
    2025 年31 巻2 号 p. 160-166
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/11
    ジャーナル フリー

    症例は39歳女性.膵頭部癌に対しSSPPDおよび門脈合併切除を施行.術後1年で高度の貧血と黒色便を認め当科へ紹介入院.腹部CTで門脈本幹の高度狭窄と胆管空腸吻合部を中心に多数の側副血行路を認めた.F2RC1食道静脈瘤へのEVL施行後も貧血が改善せず,SBEで吻合部胆管内腔に全周性に海綿状血管増生を認めたため,胆管空腸吻合部静脈瘤出血と診断しIVR治療を選択した.PTPで門脈本幹の高度狭窄と吻合部静脈瘤を介したSMVからの求肝性側副路の発達を確認した.門脈本幹の求肝性血流を改善するため狭窄長測定後に門脈ステントを挿入した.その後のSMVからの造影では吻合部静脈瘤の描出が残存していたため,さらに静脈瘤供血路の挙上空腸静脈を金属コイルで塞栓した.塞栓後の造影で門脈本幹血流の改善と吻合部静脈瘤の消失を確認し治療を終了した.術後は順調に経過し退院となり,現在も貧血を認めず外来通院中である.

  • 矢田 晋作, 鎌田 裕司, 永原 天和, 木原 琢也
    2025 年31 巻2 号 p. 167-173
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/11
    ジャーナル フリー

    症例はC型肝硬変に伴う難治性腹水に対してTIPS(経頚静脈的肝内門脈大循環短絡術)を施行した70代女性(Child-Pugh9B,MELDスコア7点,肝性脳症の既往なし).TIPSは8 mm径自己拡張型ベアステント(SMART)を留置した.術後内科的治療抵抗性肝性脳症に陥ったため,術後21日目にシャント縮小術を施行.TIPS経路内にバルーン拡張型ステントグラフト(Viabahn VBX)を進め,中心部は5 mm径,両端は8 mm径の砂時計型に留置することによってシャント縮小術を完遂した.しかし,依然脳症の改善が得られず,術後40日目に2回目のシャント縮小術を施行し,同様の方法で4.5 mm径とした.その後も肝性昏睡に陥ったため,やむなく術後44日目に,プラグを用いたシャント閉鎖術を施行した.シャント縮小術後も脳症改善に至らないこともあり,シャント閉鎖術の必要性も含めて注意深く経過をみる必要がある.

  • 堀木 翔太, 小泉 有利, 増田 泰之, 松田 卓也, 佐藤 慎哉, 鍛治 孝祐, 浪崎 正, 吉治 仁志
    2025 年31 巻2 号 p. 174-178
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/11
    ジャーナル フリー

    症例は66歳男性.アルコール性肝障害などで前医を通院していた.X-2年11月ごろより腹部膨満感,下腿浮腫を自覚し,X-2年12月当科紹介受診となった.アルコール性肝硬変による肝性腹水と診断し,フロセミド・アルダクトンを開始したが,腹水量は減少せず,週1回程度の腹水穿刺排液を要した.トルバプタンの導入を行ったが,穿刺排液の回数は減少せず,腎機障害も出現したため,X年1月に腹水コントロール目的で入院となった.補液や多量アルブミン投与にも関わらず,腎機能障害は改善せず,穿刺回数は週2,3回に及んだ.そこで第77病日に腹腔-静脈シャントの造設を行った.シャント造設後,腎機能障害は改善し,腹水穿刺やアルブミン製剤の投与を行うことなく,自宅退院となった.今回,内科的治療に奏功しなかった難治性腹水に対して腹腔-静脈シャントの造設を行い,コントロール良好となった症例を経験したため報告する.

feedback
Top