2025 年 31 巻 4 号 p. 231-237
小児期に発症した門脈血行異常症は,治療介入後も成人期に至って持続する門脈圧亢進に伴い,食道静脈瘤破裂や肝不全など多彩な合併症を引き起こす.本報告では,小児期に原発性肝外門脈閉塞症または特発性門脈圧亢進症と診断され,40代以降に介入を要した3症例を検討した.症例1は10歳時に食道離断術・脾摘後,成人期に胆管結石発症とプラスチックステント長期留置により胆管消失症候群と肝不全を発症し,生体肝移植を施行.症例2は40代で食道静脈瘤破裂,60代で感染性心内膜炎発症後に大動脈弁置換術を受け,体うっ血を呈したが,周術期管理により安定した経過.症例3は成人期に十二指腸静脈瘤破裂による出血を呈し,内視鏡的止血に成功.これらは長期経過観察の重要性と,個々の病態特性に応じた最適治療戦略の必要性を示唆する.