抄録
胃食道静脈瘤に対する胃上部切除術を主とした直達手術の術後長期経過観察症例の中から, 再発例および出血例について検討した.対象は1973年以降の術入院死や肝癌発症例を除いた直達手術症例152例である.CbF2以上またはRC (1+) 以上を術後再発とした.全体の術後累積5年再発率と出血率は, それぞれ35%, 18%であった.年代別でみると, 胃上部切除術から自動吻合器を用いた噴門部切除術に術式が変更した1984年以降, 再発率は5年で42%と有意に増加したが, 内視鏡的食道静脈瘤硬化療法の普及により, 出血率の増加を認めていない.さらに1989年以降内視鏡的静脈瘤結紮術を基本に内視鏡的食道静脈瘤硬化療法とのコンビネーションによる追加治療が定着し, 5年出血率は0%であった.厳重な経過観察と再発例に対する早期かつ積極的な追加治療を行うことにより, 出血の予防とQOLの改善が期待される.