抄録
肝外門脈閉塞症 (EHO) に伴う胃・食道静脈瘤に対し予防的内視鏡的硬化療法と抗血小板療法が奏功した1例を経験したので報告する.症例は44歳男性.H12年, 脾静脈塞栓症による小腸イレウスで小腸切除術施行.この際, EHOと診断される.背景血液凝固異常は不明.H14年の上部内視鏡検査でF3CbRC (2+) Liの食道静脈瘤と胃底部から胃体部大彎に多発する胃静脈瘤を認め, 予防的治療目的に入院.内視鏡的硬化療法で食道および胃噴門部の静脈瘤はほぼ消失した.消化管出血歴がないことからいったん, 外来での経過観察としたH16年1月, 腹腔内膿瘍で第3回目入院.切開排膿・抗生剤投与で軽快, 血栓への感染が原因として疑われた.脾静脈塞栓の既往と軽度血小板増多があるため同年7月よりバイアスピリン100mg/日を開始. H16年2月施行の上部内視鏡検査では胃体部大彎の静脈瘤そのものは認められるものの, 発赤・血豆様所見の著明な改善を認めた.