抄録
小児発症の原発性硬化性胆管炎 (PSC) に合併した胃静脈瘤に対してバルーン下逆行性経静脈的塞栓術 (B-RTO) を施行した1例を報告する.症例は11歳, 男性.1991年9月 (1歳8カ月時) に初めて肝障害を指摘された.肝庇護療法を行い外来で経過観察していたが肝障害は遷延していた.1998年3月 (8歳時), 腹腔鏡下肝生検を施行し, 組織学的所見と血液検査所見から自己免疫性肝炎 (AIH) の疑診として内服治療を開始した.2001年8月 (11歳時), 上部消化管内視鏡検査にて緊満感のあるLg-f F3 Cw RC (-) の胃静脈瘤がみられ, 腹部造影CT検査により胃腎短絡路が確認されたため, 2001年8月15日, 予防的にB-RTOを施行した.治療後, 胃静脈瘤は著明に退縮したが一部残存し慎重に経過観察中である.基礎肝疾患については, 胆管炎症状が出現した2003年8月 (13歳時) に内視鏡的逆行性膵胆管造影検査 (ERCP) を施行し肝内胆管にbeaded appearance様所見, 膵体部主膵管に限局性狭細化を認め, 臨床経過ならびに再度の組織学的所見と合わせてPSCと診断した.肝病変は治療抵抗性かつ進行性であり, 脳死肝移植に登録・待機中である.