日本門脈圧亢進症学会雑誌
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実験的肝硬変モデルにおける腹膜の形態的機能的変化の検討
栗田 俊夫
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2007 年 13 巻 3 号 p. 165-170

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抄録
Buhaclは腹水を有する肝硬変患者の腹膜に非特異的慢性炎症所見がみられるとしたが, 腹水のない段階での腹膜の変化を論じた報告はない.肝硬変の経時的な腹膜変化を検討するために, Thioacetamide (TAA) を経口投与してWistar雄ラットに肝硬変を作成した.肝硬変が碓認された時点をA群, TAAの投与を続けて腹水が発生した群をB群B群と同週齢のラットをコントロール群とした.各群で腹膜平衡機能検査 (PET), 門脈圧測定, 肝および腹膜の病理学的変化の検討を行った.肝硬変群では肝線維化が進行し, 門脈圧は上昇していた.肝硬変群の腹膜機能はコントロール群に比して低下しており, B群はA群よりも有意に低下していた.病理学的には腹膜深層の線維組織の増生と中皮細胞の変化が肝硬変群で認められ, B群で顕著であった.腹膜には腹水貯留以前に非特異的慢性炎症所見がみられ, 腹水発生の一因となり得ると考えられた.
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