日本門脈圧亢進症学会雑誌
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肝癌合併食道胃静脈瘤に対する予防的治療の検討
及川 圭介大原 秀一杉山 幸一関根 仁下瀬川 徹豊田 隆謙
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1999 年 5 巻 1 号 p. 33-38

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抄録
肝癌合併静脈瘤と診断され, 現在あるいは死亡時まで経過観察できた126例を予防群54例と非予防群72例で比較検討した.累積出血率は予防群3例, 5.6%に対し, 非予防群で17例, 23.5%と有意に高く, 出血死および出血後肝不全死も, 予防群1例, 2.9%に対し, 非予防群で10例, 16.1%と有意に高率であった.累積生存率は1生率, 3生率, 5生率ともに非予防群に比べ予防群で有意に高く, 肝予備能別ではChild Bで有意差を認めた.また, 門脈本幹の腫瘍塞栓 (Vp3) 症例は9例で, 3例に出血を認めたが, 生存期間は出血例, 非出血例ともに約2カ月と差を認めず予後不良であった.以上より出血率, 出血死, 出血後肝不全死を減少させ, 生存期間を延長するという意味で, 肝癌合併静脈瘤に対する予防的治療の臨床的意義は高いものと考えられた.ただし, Vp3症例においては予防的治療の意義は現在のところ低いものと考えられた.
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