抄録
症例は64歳女性.C型肝炎ウイルス陽性肝硬変の経過観察中に胃静脈瘤 (Lg-cfF3RC+) を認め, 腹部CTおよび血管造影検査にて, 胃腎シャントのない孤立性胃静脈瘤と診断した.左下横隔静脈造影にて胃-横隔静脈シャントが排血路と診断したが, 通常のシングルバルーン造影力テーテルを排血路へ選択的に挿入するのは困難であった.そこで造影孔を挟むようにバルーンが装着された, ダブルバルーンカテーテルを用い, 排血路を挟み込むようにバルーンを留置することで, 選択的に排血路, 胃静脈瘤および短胃静脈が造影され, バルーン下逆行性経静脈的塞栓術 (B-RTO) が可能であった.その後胃静脈瘤は消失した.胃腎シャントをもたない孤立性胃静脈瘤にはB-RTOが困難な症例がみられるが, 胃-横隔静脈シャントが排血路の場合, ダブルバルーンカテーテルを用いることで, 血行改変することなく治療可能な症例があると考えられた.