日本門脈圧亢進症学会雑誌
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8 巻, 3 号
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  • 榛澤 真理, 中野 茂, 蜂矢 朗彦
    2002 年 8 巻 3 号 p. 173-179
    発行日: 2002/12/15
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    食道静脈瘤に対する撲滅結紮法 (eEVL) の治療効果と長期の静脈瘤の予後およびその再発因子について, 123例を対象にEUSを用いて検討した.平均観察期間34±21カ月で静脈瘤再発は25例にみられ, 累積非再発率は1年90.7%, 3年80.4%, 5年63.6%であった.因子別の同非再発率は, child A (p=0.03), 噴門部粘膜下層の血管断面積が治療前に100mm2未満 (p=0.01), 治療後に10mm2未満 (p=0.04) および治療後の下部食道粘膜下層内に残存血管なし (p=0.007) などで良好であった.多変量解析では下部食道の粘膜下層血管の残存が静脈瘤再発に最も影響を及ぼしていた (risk比7.41, p=0.04).以上より, 食道静脈瘤に対するeEVLは良好な治療成績をもたらすが, 再発予防には治療後の下部食道粘膜下層の残存血管がないことをEUSで確認すべきと考えられた.
  • 松井 繁長, 工藤 正俊, 中岡 良介, 汐見 幹夫
    2002 年 8 巻 3 号 p. 180-184
    発行日: 2002年
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    食道静脈瘤に対して, 初回治療として内視鏡的静脈瘤硬化療法 (EIS) と内視鏡的静脈瘤結紮術 (EVL) の同時併用療法 (EISL) と, さらにEVL単独の追加を行った後に地固め療法を施行した.地固め療法としてアルゴンプラズマ凝固法 (APC) による焼灼を行った15例 (APC群) と1%ポリドカノール (1%AS) の血管外注入法を行った34例 (1%AS群) を対象に治療成績を比較検討した.APC群と1%AS群の治療終了 (F0RCサイン陰性) までの平均総治療回数は, 2.2±0.5回, 2.8±0.5回, 地固め治療回数は, 1.1±0.3回, 1.6±0.6回であり, APC群でともに有意に低かった (p<0.05).治療終了後1年, 2年の累積非再発率はAPC群93.3%, 84.0%, 1%AS群87.9%, 76.9%であり有意差はなかった (p=0.62).合併症は1%AS群でバルーン拡張術を必要とする食道狭窄を3例 (8.8%) に認めた以外両群とも重篤なものはなかった.APCによる食道粘膜への焼灼は, 容易に全周性に浅い潰瘍を形成し, 粘膜を線維化組織へと置き換えることができ, 重篤な合併症がない安全な方法である.1%ASによる地固め療法と比較して治療必要回数は少なく, 同等の治療効果が得られることにより, 低侵襲であり, 医療費抑制の観点からも地固め療法に適しており有用である.
  • 吉田 寛, 田尻 孝, 真々田 裕宏, 谷合 信彦, 平方 敦史, 川野 陽一, 水口 義昭, 清水 哲也, 高橋 翼
    2002 年 8 巻 3 号 p. 185-188
    発行日: 2002/12/15
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    内視鏡的静脈瘤結紮術 (EVL) の意義と適応を検討した.対象は, 初回にEVLを施行した80例で, 後日EVL追加した34例 (EVL群) と後日1%ASによる内視鏡的硬化療法 (EIS) を追加した46例 (EVL+EIS群) の2群に分類した. (EVL, EVL+EIS) (mean±SD) (1) 完全消失率 (94.1, 93.5%) (NS), 治療回数 (2.5±0.5, 3.1±1.0回) (p<0.005), 総結紮数 (22.1±8.2, 13.2±4.9) (p<0.0001). (2) 累積初回再発率は有意にEVL群で高率 (p<0.05). (3) 再発例 (30例, 36例) (NS) に対する追加治療再入院回数 (1.8±0.6, 2.9±1.2回) (p<0.0001).うち手術, 塞栓術を追加例 (3例, 12例) (p<0.05) であった.EVL群では再発率は高率だが, 少ない追加治療回数にてコントロール可能であった.-方EVL+EIS群は, 内視鏡治療の限界例が多かった.EVLは, 当初より再発を念頭にいれ, 追加治療も含めて一連の治療法と考えれば, 良好な長期成績が得られ, first choiceの治療法になりうる.
  • 野浪 敏明, 黒川 剛, 大輪 芳裕, 小竹 克博
    2002 年 8 巻 3 号 p. 189-193
    発行日: 2002年
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    肝硬変症158例を対象として, 全身循環・酸素需給動態, 肺循環・呼吸動態を測定した.高度肝障害例では軽度肝障害例に比べ, よりhyperdynamicな全身循環を呈した.心係数, 全身末梢血管抵抗, 動静脈酸素較差がそれぞれ血漿量と相関した.高度肝障害例では, 肺シャント率の増加, PaO2の低下, 肺血管抵抗の減少を認めた.全身酸素消費量は, 高度肝障害例の中でhyperdynamic stateを示さない症例において, 低下を認めたが, hyperdynamic stateを示した症例においては, 酸素消費量が維持されていた.肝硬変症のhyperdynamic stateには血漿量の増加が成因として深く関与しており, hyperdynamic stateはとくに肝障害の高度な症例において, 代謝の低下を代償していると考えられた.
  • 橋爪 誠
    2002 年 8 巻 3 号 p. 194-200
    発行日: 2002年
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    門脈圧亢進症における, 胃上部門脈系血管抵抗の著明な低下に伴う流入血流量および流出血流量の増加, すなわち胃上部の局所循環亢進状態を提唱し, 食道胃静脈瘤出血の重要な発生要因と考えた.病態として, 胃動静脈吻合の開存や, 胃粘膜筋板直下のらせん型細動脈の直線化などの病理組織学的変化を明らかにした.最近では, 食道胃粘膜の微小循環における一酸化窒素等の役割を明らかにした.
  • 辻 邦彦, 松永 隆裕, 姜 貞憲, 桜井 康雄, 渡辺 晴司, 真口 宏介
    2002 年 8 巻 3 号 p. 201-204
    発行日: 2002年
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    F0/F1再発食道静脈瘤に対する内視鏡的硬化療法 (EIS) の成績についてretrospectiveに検討した.細径で屈曲蛇行のある静脈瘤であるが, 手技に精通すれば約9割の確率で血管内注入が成功した.目的通りに十分に供血路まで注入されると, その後の再々発率, 出血率が有意に改善する傾向が認められた.基盤病変が安定しており長期生存が期待できる例においては, 再発静脈瘤に対しても初発静脈瘤と同様にEISがきわめて有用な治療法と思われた.
  • 鈴木 毅, 村田 宣夫, 三橋 敏武, 橋本 大定, 釜野 剛, 町田 喜久雄
    2002 年 8 巻 3 号 p. 205-210
    発行日: 2002/12/15
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    胃全摘後に発生する食道静脈瘤は, 稀であり, 空腸静脈からの血流を主とし, 治療に難渋する症例もみられる.今回, われわれは, 残胃癌のため残胃全摘術を行った5年後に, 食道静脈瘤の破裂をきたした1例を経験した.症例は, 40歳の男性, 2000年10月に吐血, 下血のため近医を受診し, 食道静脈瘤破裂と診断され, 同日, 当センターを紹介された.内視鏡所見では, 食道空腸吻合部付近の静脈瘤からの出血を認め, 内視鏡的静脈瘤結紮術 (EVL) を行い止血した.後日, 門脈造影で門脈より空腸静脈から吻合部, 食道へ連なる静脈瘤を認めたため, 経門脈的塞栓術 (PTO) を行った.その後, 静脈瘤は消退し, 経過観察を行っていたが, 2001年8月頃より, 食道下部にtelangiectasiaを認めたため内視鏡的硬化療法 (EIS) を選択し治療した.肝炎抗体もすべて陰性で, 肝機能検査上, 画像診断上も肝硬変の所見を認めず, 比較的稀な症例として報告した.
  • 中山 聡, 村島 直哉
    2002 年 8 巻 3 号 p. 211-217
    発行日: 2002/12/15
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は64歳女性.C型肝炎ウイルス陽性肝硬変の経過観察中に胃静脈瘤 (Lg-cfF3RC+) を認め, 腹部CTおよび血管造影検査にて, 胃腎シャントのない孤立性胃静脈瘤と診断した.左下横隔静脈造影にて胃-横隔静脈シャントが排血路と診断したが, 通常のシングルバルーン造影力テーテルを排血路へ選択的に挿入するのは困難であった.そこで造影孔を挟むようにバルーンが装着された, ダブルバルーンカテーテルを用い, 排血路を挟み込むようにバルーンを留置することで, 選択的に排血路, 胃静脈瘤および短胃静脈が造影され, バルーン下逆行性経静脈的塞栓術 (B-RTO) が可能であった.その後胃静脈瘤は消失した.胃腎シャントをもたない孤立性胃静脈瘤にはB-RTOが困難な症例がみられるが, 胃-横隔静脈シャントが排血路の場合, ダブルバルーンカテーテルを用いることで, 血行改変することなく治療可能な症例があると考えられた.
  • 跡地 春仁, 田橋 賢也, 福嶋 慎太郎, 竹内 幸俊, 河島 祥彦, 久保田 佳嗣
    2002 年 8 巻 3 号 p. 218-223
    発行日: 2002年
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は56歳, 男性.大酒家 (1日日本酒換算5合).糖尿病で内服加療を受けていたが, 吐血で入院となった.緊急上部消化管内視鏡検査を施行したところ胃角部に出血性胃潰瘍を認め, 止血術を施行した.その際に食道静脈瘤Li, F1, Cw, RC (-), Lg (-) を認めた.門脈圧亢進症が疑われ腹部CT検査および腹部超音波検査を施行したところ, 門脈左枝から分枝する異常血管を指摘された.さらに腹部血管造影検査では同異常血管は左門脈から遠肝性に肝円索部に入り, 臍部臍で下腹壁静脈と吻合さらに右外腸骨静脈に流入しており, 臍静脈 (傍膀静脈) 開存と考えられた.なお肝硬変は指摘できなかった.膀静脈は出生直後に血流が途絶しやがて肝円索となるが, 本症例では何らかの原因で二次的門脈圧亢進を来し, 臍静脈 (傍臍静脈) が開存したものと考えられ, Cruveilhier-Baumgarten症候群と診断した.なお同静脈の血管性雑音やメズサの頭は認めなかった.稀な症例と思われ, 報告する.
  • 赤池 淳, 佐藤 隆啓, 山崎 克, 大村 卓味, 狩野 吉康, 豊田 成司
    2002 年 8 巻 3 号 p. 224-227
    発行日: 2002年
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は70歳女性.平成元年よりC型肝炎にて外来通院しており, 平成11年には食道静脈瘤と直腸静脈瘤に対し内視鏡的硬化療法 (endoscopic injection therapy;EIS) を施行した.平成13年には直腸静脈瘤再発にてEISを施行.以後定期的に検査を行っていたが, 平成14年4月初旬に下血を認めたため, 下部消化管内視鏡検査を施行.直腸静脈瘤の明らかな再発の所見はなかったが, 結腸脾彎曲部に2条のF2CbRC (-) の静脈瘤を認めた.なお, 出血点は不明であった.腹部力ラードプラエコー, CT, 門脈MRangiographyでは脾門部から下行結腸外側を下降する拡張した側副血行路を認め, 血管造影では脾門部から左卵巣静脈に吻合する著明に拡張した側副血行路と下腸間膜静脈から分枝する静脈瘤を認めた.門脈圧亢進症における血行動態を考えるうえで非常に興味深い症例と思われた.
  • 中村 晃子, 迫田 晃郎, 田畑 峯雄, 久米村 秀, 溝内 十郎, 大迫 政彦, 内園 均, 林 完勇, 佐々木 道郎, 矢野 武志
    2002 年 8 巻 3 号 p. 228-232
    発行日: 2002年
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    症例1は73歳の女性で2回の開腹歴があった.意識消失発作があり, 一過性脳虚血発作と診断されていた.軽度の肝機能障害と高アンモニア血症 (148μg/dl) を認めた.CTと血管造影で回結腸静脈瘤を認め, 門脈大循環短絡による肝性脳症と診断された.外科的に短絡路閉鎖術および静脈瘤切除術を施行した.症例2は74歳の男性で大酒家であった.5年前より一過性脳虚血発作として治療されていたが, 高アンモニア血症 (398μg/dl) を認め, 回結腸静脈より右精巣静脈, 腎静脈を経て下大静脈に入る短絡による肝性脳症と診断された.治療は同時性バルーン閉鎖下塞栓術を施行した.治療後は2例とも門脈血流も求肝性となり, 血中アンモニア値も正常化した.また, Child Aの肝障害 (肝炎ウイルスマーカー陰性) は治療後に改善し, 食道胃静脈瘤の出現, 増悪もみていない.門脈大循環短絡による肝性脳症に対してそれぞれ外科的治療と塞栓術を施行し, 良好な結果を得たので報告する.
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