2003 年 9 巻 2 号 p. 78-83
肝癌合併食道静脈瘤に対する内視鏡治療の有用性についてretrospectiveに検討した.対象は食道静脈瘤を合併した肝癌症例43例で, 対照群として同時期の静脈瘤非合併肝癌症例21例を選択した.内視鏡治療は, 基本的には内視鏡的硬化療法を行い, 高度肝障害例やVp3以上の門脈浸潤症例には内視鏡的結紮術を施行した.結果として, 内視鏡治療を施行した静脈瘤合併肝癌群と静脈瘤非合併肝癌群との間に累積生存率の差を認めなかった.また予後に影響する因子を, 多変量解析を用いて検討すると, Child-Pugh分類, 肝癌stage分類があげられた.以上の結果より, 静脈瘤合併肝癌症例における内視鏡治療の有用性が示唆され, さらに静脈瘤治療時の肝予備能および肝癌進展度の評価は術後の予後を推測するうえで重要であると考えられた.