日本門脈圧亢進症学会雑誌
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胃腎短絡路に嚢状拡張を有する孤立性胃穹窿部静脈瘤に対して脾動脈バルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術 (B-RTO) が有効であった1例
田中 正彦小野 広幸野間 栄次郎坂口 正剛八尾 恒良
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2003 年 9 巻 3 号 p. 166-170

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抄録
症例は53歳, 女性.C型肝硬変症である.1999年7月と2001年5月に食道静脈瘤に対して内視鏡的硬化療法の既往がある.2002年4月孤立性胃穹窿部静脈瘤の形態が急速に増大したため予防的治療の適応と判断した.胃腎短絡路を有する胃静脈瘤であったためB-RTOを施行した.胃腎短絡路に2カ所の強い狭窄部を有する嚢状拡張を認めた.その強い狭窄部のため通常のB-RTOだけでは治療困難であった.B-RTVにて孤立性胃穹窿部静脈瘤の供血路までの造影を可能にするために, 門脈圧低下を狙い一時的脾動脈閉塞を併用した.一時的脾動脈閉塞は後胃静脈の血流を遮断させ, B-RTVによる後胃静脈までの描出を可能とした.胃腎短絡路にこのような狭窄部を認めた報告はきわめて少なく, その成因は明らかでない.胃腎短絡路の特殊性により, 通常のB-RTOに加えて一時的脾動脈閉塞を併用することにより, 孤立性胃穹窿部静脈瘤の治療に成功した.
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