日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム4: 血友病の診療の進歩と今後の課題
定期補充療法の現状と今後の課題
酒井 道生
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2015 年 52 巻 3 号 p. 237-242

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抄録
血友病診療において,欠乏する凝固因子を定期的に補充する定期補充療法が有効であることを実証した報告は多い.とくに,関節内出血を減少させ血友病性関節症の発症および進行を抑制することや,日常生活の中での出血に対する不安を軽減し生活の質を改善することは患者に多大な恩恵をもたらす.一方,実際に定期補充療法を開始する際にはインヒビターの発生や血管確保の問題が関心事となる.定期補充療法とインヒビターの関連については,定期補充療法の導入がインヒビターの発生を抑制することはあっても,助長はしない,という考え方が最近のコンセンサスである.しかし,仮に生後数か月といった早期から定期補充療法を開始した場合に本当にインヒビターの発生に悪影響を及ぼさないのかという懸念は完全には払拭されていない.また,その頃の血管確保は技術的に困難なことも少なくないため,定期補充療法を「いつから」「どのようなレジメン」で開始するかについては施設毎,患者毎に判断されているのが実状である.今後の課題として,これまでの定期補充療法は,トラフ値(製剤投与直前の凝固因子活性)を1%以上に保ち,重症患者を中等症(凝固因子活性1~5%)患者の病像に改善する治療法であるとイメージされてきた.しかし最近では,ピーク値(製剤投与後の凝固因子活性の最高値)の重要性も強調されており,薬物動態を評価した上で個々に適した治療法を見直すべきであろう.
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© 2015 日本小児血液・がん学会
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