日本小児血液・がん学会雑誌
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教育セッション1: 胚細胞腫瘍(脳腫瘍を除く)
頭蓋外胚細胞腫瘍の病態と診断・治療
上原 秀一郎
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2016 年 53 巻 2 号 p. 84-90

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抄録

胚細胞腫瘍とは胎生期に出現する胚細胞(germ cell,原始生殖細胞)に由来する様々な腫瘍の総称であり,奇形腫群腫瘍とも呼ばれる.未分化な胚細胞の性格を示すものから,胚外組織への分化を示す腫瘍,さらに三胚葉への分化を示す腫瘍が含まれ,成熟奇形腫,未熟奇形腫,卵黄嚢癌,絨毛癌,胎児性癌,未分化細胞腫などに分類される.原発部位は卵巣が最多であり,精巣と合わせて性腺が半数以上を占め,これに仙尾部,後腹膜,縦隔が続く.
腫瘤触知や周囲臓器への圧迫による症状で発症することが多いが,組織型と年齢,発生部位により様々な病態を呈する.悪性腫瘍では血清αフェトプロテイン(AFP)やβ-ヒト絨毛ゴナドトロピン(HCG)などの腫瘍マーカーが上昇することがある.
治療の原則は良性腫瘍の場合は周囲臓器の機能温存に留意しつつ,腫瘍を全摘する.悪性腫瘍の場合は,初診時に一期的に摘出困難,あるいは大きな手術侵襲が予測される場合はまず腫瘍生検に留め,化学療法により腫瘍の縮小を図り,摘出術が行われる.代表的なプロトコールは,PVB, PEB, JEBなどである.化学療法の有効例が多いため,進行例でも予後は比較的良好である.
JCCG胚細胞腫瘍委員会も設立され,今後,国際的な共同研究も期待される.

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© 2016 日本小児血液・がん学会
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