日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム8: Hematologic disorders in Down syndrome
ダウン症候群に合併した急性骨髄性白血病に対する本邦での前方視的研究
多賀 崇
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2016 年 53 巻 3 号 p. 203-207

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抄録

ダウン症候群に発症した骨髄性白血病(ML-DS)は,ほとんどがFAB分類M7の形態で4歳までに発症,芽球の薬剤感受性が高い一方治療毒性が強いなど,非DSに発症したAML(AML-non DS)と違った特性をもち,独立した治療研究が行われている.欧米ではAML-non DSと骨格は同じとし投与量の減量を行ったものが行われているが,本邦ではML-DSに特化したものが行われてきた.これらの背景を踏まえ,日本小児白血病リンパ腫研究グループ(JPLSG)によるML-DSに対する前向き臨床試験,AML-D05試験が行われた.本邦でのこれまでの治療研究をもとに,初回寛解導入療法に基づき,形態学的に寛解が得られたものを標準リスク群(SR),非寛解であったものを高リスク群(HR)とするリスク層別化治療で,SRには前研究よりも治療軽減,HRには持続ならびに大量シタラビンによる救済療法を行った.72例の登録があり,3年無病ならびに全生存率はそれぞれ83.3%と87.5%であった.HRはわずか2例で,リスク層別化は不成功であったが,大多数を占めたSRは治療軽減にもかかわらず治療成績の低下はみられなかった.再発・寛解導入不能のML-DSは極めて予後不良であることから,予後因子としての微小残存病変(MRD)の評価を行うべく,JPLSG AML-D11試験が施行されている.

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© 2016 日本小児血液・がん学会
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