日本小児血液・がん学会雑誌
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教育セッション6: AML
小児急性骨髄性白血病治療の現在と未来
富澤 大輔
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2016 年 53 巻 3 号 p. 256-265

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抄録

小児の急性骨髄性白血病(AML) の治療成績は,シタラビンとアントラサイクリン系抗がん剤(ATC) を中心とした抗がん剤治療の強化,遺伝子染色体異常および治療反応性に基づくリスク層別化と造血幹細胞移植適応の適正化,支持療法の進歩等により,現在では長期の無イベント生存率が約60%,全生存率が約70%にまで到達した.しかしながら,小児AML患者の10%近くが寛解導入不能に陥り,寛解を得た症例でも約30%が現状では再発している.これら再発・難治AML患者の全生存率は30%程度にとどまっており,依然として白血病の克服が小児AMLにおける最大の課題である.AML治療の改善に向けて,①従来治療のさらなる強化,②新規予後因子の抽出とそれに基づくリスク層別化治療,③新規治療の導入,の3本を柱として治療開発が行われている.従来治療の強化として,小児では晩期合併症を軽減する観点から,シタラビンまたは心毒性の少ないATC製剤の強化が中心となっている.新規予後因子としては,遺伝子解析技術の進歩を背景に新たな遺伝子変異が同定されている他,微小残存病変による治療層別化も行われている.最終的には新規治療の開発がAMLの予後改善には必須であり,分子標的治療や免疫療法などの臨床試験が試みられている.AMLの新規治療開発は成人を中心に行われており,小児AMLに対する開発環境の整備も重要な課題である.

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© 2016 日本小児血液・がん学会
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