2016 年 53 巻 5 号 p. 391-396
造血細胞移植後合併症の多くは,非感染性炎症性病変であり,本稿では,移植後合併症を,移植後免疫回復のプロセスから病理組織学的,免疫組織学的に解析する.移植後免疫は,ドナー型免疫が再構築されるまでは,前処置抵抗性マクロファージによる原始免疫が遺残する.このマクロファージによると考えられる病変は,生着不全,移植後血球貪食症候群,皮膚病変である.重症な移植後合併症の代表である腸管病変の多くは,GVHDではなく微小血管障害であり,活性化された遺残マクロファージが重要と考えている.アロ細胞免疫反応による合併症は古典的GVHDである.皮膚,腸管,肝臓の細胆管を標的とし,ドナー由来の細胞障害性Tリンパ球が,標的上皮細胞にアポトーシスを引き起こす病変がその基本的メカニズムである.COP(BOOP)は臍帯血移植で比較的頻度が高く,肺胞腔がマクロファージを主体とする細胞浸潤により閉塞する実質性肺障害である.浸潤するマクロファージはドナー由来で,ドナー由来の組織在住マクロファージ再構築の時期に発症するアロ細胞免疫反応と考えられる.
移植後早期合併症で,レシピエント由来の残存マクロファージの増加,活性化が重要であることを指摘し,移植後合併症を,免疫回復の階層性,回復の時系列と比較して,組織学的,免疫組織学的所見から考察する.