日本小児血液・がん学会雑誌
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教育セッション8: 緩和・社会支援
小児がんの在宅緩和ケア
前田 浩利戸谷 剛
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2016 年 53 巻 5 号 p. 419-427

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抄録

わが国では,がんの子どもを自宅で看取るのはまれだが,緩和ケアの先進国英国では,がんの子どもの7割から8割が自宅で亡くなっているという報告もあり,WHOの小児緩和ケアの定義でも,自宅においても緩和ケアが提供されるべきという一文が記載されている.近年成人でも,がんの在宅緩和ケアは積極的に推進されている.

しかし,がんの子どもの在宅緩和ケアは,成人と共通点も多いが異なる点も少なくない.大きく異なる点は3つで,ひとつは,緩和ケアが必要な時間が,人生全体の中で占める割合である.大人は,その人生をある程度生きたところで,治らない状態,life-threatening conditionsになる.しかし,子どもは人生の多くの割合を,life-threatening conditionsで生きる.したがって,緩和ケアも,子どもの特性の成長と発達を支えることが重要になる.2つ目は,緩和ケアの受け入れの問題である.多くの親にとって,いくら良いケアを提供されても,わが子を看取る体験などしたくない.「緩和ケア」を掲げて,在宅介入するのは,両親の強い抵抗に会う場合がある.3つ目は,子どもは成人に比較して,疼痛,呼吸苦などの症状コントロールが困難なことである.しかし,これらの困難さを超えて,がんとともに人生の最期の限られた時を生きる子どもと家族にとって,在宅緩和ケアを実現することの意義は大きい.

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© 2016 日本小児血液・がん学会
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