2度の重度出血をきたしたインヒビター保有先天性血友病Aの1例を報告した.初回は転倒5日目に血便が出現し,回腸出血と診断した.2度目は筋力トレーニングの11,15,および16日目にそれぞれ右側腹部痛,血尿,左下腹部痛が出現し,腸腰筋出血,腎出血と診断した.受傷直後に初回は肘・足関節出血を,2度目は母指球筋出血を発症し,遺伝子組換え活性型血液凝固第VII因子製剤の自己注射が行われていた.また患児は血便を2日間,血尿を1日間自己判断で放置していた.本例の重度出血の症状出現に日数を要した一因として,不適切なバイパス治療を自己注射で実施したことが考えられた.また受診が遅れた背景に医療者の指導不足が考えられ,大いに反省させられた.出血症状とその対応に関し定期的に十分な説明が必要と思われた.