日本小児血液・がん学会雑誌
Online ISSN : 2189-5384
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症例報告
中等度出血に対する止血治療が,併存する重度出血を潜在化したと考えられたインヒビター保有血友病A
神鳥 達哉今井 剛赤杉 和宏常念 大輔石塚 潤美馬 隆宏木村 暢佑樋口 嘉久廣田 常夫
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2016 年 53 巻 5 号 p. 459-463

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抄録

2度の重度出血をきたしたインヒビター保有先天性血友病Aの1例を報告した.初回は転倒5日目に血便が出現し,回腸出血と診断した.2度目は筋力トレーニングの11,15,および16日目にそれぞれ右側腹部痛,血尿,左下腹部痛が出現し,腸腰筋出血,腎出血と診断した.受傷直後に初回は肘・足関節出血を,2度目は母指球筋出血を発症し,遺伝子組換え活性型血液凝固第VII因子製剤の自己注射が行われていた.また患児は血便を2日間,血尿を1日間自己判断で放置していた.本例の重度出血の症状出現に日数を要した一因として,不適切なバイパス治療を自己注射で実施したことが考えられた.また受診が遅れた背景に医療者の指導不足が考えられ,大いに反省させられた.出血症状とその対応に関し定期的に十分な説明が必要と思われた.

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© 2016 日本小児血液・がん学会
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