日本小児血液・がん学会雑誌
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症例報告
vincristine/carboplatinによる化学療法を施行した多発転移病変を伴う線維形成性乳児星細胞腫
中村 達郎西川 拓朗大吉 達樹東 美智代有田 和徳河野 嘉文
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2017 年 54 巻 1 号 p. 39-43

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抄録

症例は5か月の男児.水平性眼振と嘔吐を主訴に受診し,造影CT・MRI検査で両側硬膜下水腫,鞍上部腫瘍,および延髄,脊髄に多発転移病変を認めた.鞍上部腫瘍の生検術により,繊維形成性乳児星細胞腫(DIA: desmoplastic infantile astrocytoma, WHO grade 1)と診断した.低悪性度神経膠腫に対する化学療法レジメンであるvincristine,carboplatin(VC)療法を開始した.すぐに腫瘍径は縮小し始め,治療開始10週後には転移巣も消失した.現在,治療終了後13か月であり,鞍上部腫瘍はわずかに残存するものの,再増大は認めない.現在,症状はなく,精神運動発達の遅れもない.症状を有するDIAに対しては外科的切除が推奨されるが,切除不能もしくは多発転移病変を有するDIAに対してはVC療法が有効な治療法の一つであると考えられた.

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© 2017 日本小児血液・がん学会
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