日本小児血液・がん学会雑誌
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症例報告
2つのDNA高二倍体クローンを認め,自然退縮の過程で増大に転じた乳児神経芽腫の一例
池田 秀之新妻 秀剛阪本 昌樹鈴木 資渡辺 祐子入江 正寛力石 健風間 理郎渡辺 みか笹原 洋二呉 繁夫
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2017 年 54 巻 2 号 p. 149-152

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抄録

乳児期に発症する神経芽腫の多くは予後良好であり,自然退縮が期待できるため,限局性腫瘍に対しては無治療経過観察が試みられる事も多い.我々は無治療経過観察中に増大傾向に転じ,腫瘍内に異なるバイオロジーを有する少なくとも2つのクローンが存在したと考えられる乳児神経芽腫症例を経験した.症例は満期出生の男児で,出生直後に右副腎原発の嚢胞性神経芽腫と診断された.無治療経過観察中に一旦退縮傾向を示したが,生後半年より嚢胞内部に充実性腫瘤の増大傾向を認め,腫瘍全摘出術を施行した.摘出腫瘍のDNA ploidy解析では高二倍体の2つの異なるピークが検出され,複数クローンの腫瘍細胞の存在が示唆された.病理組織所見でも分化傾向を示す部分と低分化な部分が混在していた.低リスク神経芽腫の中にも,明確なheterogeneityが存在する事を示唆する興味深い症例であった.

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© 2017 日本小児血液・がん学会
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