2017 年 54 巻 2 号 p. 143-148
川崎病罹患後に重度の肝機能障害を伴う二次性血球貪食性リンパ組織球症(HLH)を合併し,鑑別や治療に難渋した症例を経験した.症例は1歳9か月女児,初発の川崎病に対しガンマグロブリン静注(IVIG)とプレドニゾロンで治療後28日目に,再燃が疑われた.しかし,肝機能障害,2系統の血球減少,可溶性IL-2受容体(sIL-2R)値の上昇を認め,HLHの診断基準5/8項目を満たし2次性HLHと診断した.急性期は多臓器障害のため集中治療を要した.メチルプレドニゾロンパルス,IVIG追加投与後,デキサメサゾン投与を開始したが,症状の再増悪やsIL-2R値の上昇を認めたためシクロスポリンAを追加し,後遺症なく軽快した.
川崎病による二次性HLHの報告は少数だが,多臓器障害や急激な症状の悪化をたどることもある.非典型的な経過や治療不応の川崎病ではHLHの合併を鑑別に挙げ,早期診断・治療を行うことが重要である.