日本小児血液・がん学会雑誌
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ワークショップ1: Organ transplantation for pediatric cancer: discussion towards consensus
小児肝悪性腫瘍に対する肝移植の役割と課題
猪股 裕紀洋
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2017 年 54 巻 3 号 p. 219-223

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抄録

いわゆる切除不能な小児肝悪性腫瘍に対する肝移植は,根治療法の選択肢の一つとして認知されている.日本肝移植研究会の2015年までの集計によれば,18歳未満の腫瘍性疾患に対する肝移植(全例が生体肝移植)114例中,大半の94例が肝芽腫対象で,その他に肝細胞癌8例,肝未分化肉腫1例などが含まれる.肝芽腫に対する肝移植は保険適応であり,現在年間10例程度に施行されている.肝芽腫の生体肝移植後生存率は1年で87.1%,5年以降は75.6%であり,他の小児肝移植術後生存率と比較してもさほど悪くない.過去の欧州での集計で,肝切除後の再発に対する肝移植は,一次的移植より成績が悪いと言われていたが,国内の集計では,有意な差がないことが明らかになっている.現在,日本小児肝腫瘍研究グループ(JPLT)による,JPLT-3治療プロトコール研究が行われているが,そこでは登録症例の中央画像診断,判断困難症例のエキスパートによる治療方針示唆のシステムが確立している.現在肝移植適応で判断が難しいのが,遠隔転移,特に肺転移のあった症例で,化学療法による消失後の移植適応である.少なくとも,画像診断で明確な肺転移が確認できない症例は,移植禁忌とはならないが,国内調査でも,そのような症例での移植後再発が多いのも事実である.移植後の化学療法や免疫抑制にもなお一定の共通認識がなく,これも含めた継続的な症例蓄積と解析が必要である.

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© 2017 日本小児血液・がん学会
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