日本小児血液・がん学会雑誌
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特別要望演題3: AYA世代の骨・軟部腫瘍
四肢の骨・軟部肉腫
西田 佳弘
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2017 年 54 巻 3 号 p. 224-228

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抄録

日本整形外科学会の全国骨・軟部腫瘍登録データによるとAYA世代において発症数の多い肉腫として,骨原発では骨肉腫とEwing肉腫,軟部では横紋筋肉腫,滑膜肉腫,脂肪肉腫が挙げられる.その他にAYA世代に発症する特徴的な疾患として神経線維腫症1型に合併する悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST),良悪性の中間型であるデスモイド型線維腫症などがある.

すべてが稀な疾患であり,各々の治療法が異なるために経験豊富な施設での治療が望まれる.横紋筋肉腫,デスモイド型線維腫症では診療ガイドラインを熟知していないために診療方針が施設ごとに大きく異なっていることが明らかとなった.骨・軟部肉腫の中でも,これまで通り診療レベルの均てん化および向上をめざすべき疾患と,診療の一層の集約化が必要である疾患があり,区別していく英断が必要であろう.四肢に好発する骨肉腫の治療では人工関節置換を必要とする場合が多く,治療後運動が制限されるとともに,腫瘍が治癒した後も人工関節の弛みや感染に対して複数回の手術が必要となる場合が多く,AYA世代および30歳以降も継続的な診療が必要となる.またMPNSTのように早期発見が遅れて治療成績が低下する疾患ではAYA世代のNF1患者への啓蒙が重要である.デスモイド型線維腫症では,腫瘍自体あるいは治療によって四肢の機能障害に悩まされるAYA世代患者が多く,多診療科による慎重な診療方針決定が重要となる.

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