2017 年 54 巻 5 号 p. 299-305
L-asparaginase(ASNase)は急性リンパ性白血病(ALL)治療のkey drugの一つであるが,有害事象としての過敏反応はASNaseの不活化と関連し治療成績の低下にも繋がるため,その対策は臨床的に大変重要である.過敏反応に対しては,ASNase活性測定による治療薬物モニタリング(TDM)の評価を基にした代替薬の使用が治療成績の改善をもたらすことが報告されている.大腸菌由来ASNaseの代替薬として,Erwinia由来ASNase(Erw-ASNase)の安全性,有効性は多くの研究から示されており,本邦でも2016年12月に承認が得られた.
日本小児白血病リンパ腫研究グループと日本成人白血病治療共同研究グループは共同でT細胞性ALL(T-ALL)に対して多施設臨床試験ALL-T11/T-ALL-211-Uを2011年に開始したが,この臨床研究は,ASNaseの強化をBFM骨格に取り入れたことを特徴の一つとしている.現在検討中の次期T-ALL研究では,ALL-T11/T-ALL-211-Uの治療骨格を踏襲しながら,主たる目的の一つにTDMに基づくASNase治療の適正化を掲げている.次期研究によって小児,思春期および若年成人T-ALLの治療成績の向上が期待される.