アスパラギナーゼは小児急性リンパ性白血病の治療において重要な薬剤であるが,副作用として過敏反応が問題となる.セントジュードTotal XVプロトコールではネイテイブE. coliアスパラギナーゼ(Elspar)が用いられ,過敏反応(症候性および無症候性)がセントジュード分類低リスク群で73%,標準および高リスク群で54%の症例にみられた.低リスク群に過敏反応が多くみられた理由として,化学療法における免疫抑制のレベルが低いことと,アスパラギナーゼの休薬期間が長いことが考えられた.過敏反応を引き起こすアスパラギナーゼ抗体の産生は,アスパラギナーゼ活性の低下のみならず,同時に投与されるデキサメサゾンの血中濃度の低下を引き起こし,中枢神経系再発の増加と関連した.ゲノムワイド関連解析では,T細胞を介した免疫反応に関わる遺伝子が過敏反応に重要な役割を担っていた.また,動物モデルではデキサメタゾンの前投与が過敏反応を軽減させた.
米国ではポリエチレングリコールが結合されたPEG-アスパラギナーゼ(Pegaspargase)がElsparに代わり使われている.PEG-アスパラギナーゼの半減期はElsparより長く過敏反応の発生率も低い.過敏反応を減らす方法として,PEG-アスパラギナーゼの使用,休薬期間をできるだけ少なくする,ステロイドの前投与,リツキシマブなどの投与により抗体産生を抑制することが考えられる.