日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム5: 悪性ラブドイド腫瘍 Malignant Rhabdoid Tumor(MRT)
腎悪性ラブドイド腫瘍 (Malignant Rhabdoid Tumor of the Kidney; MRTK)の放射線療法についての検討
野崎 美和子
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2017 年 54 巻 5 号 p. 316-319

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抄録

腎悪性ラブドイド腫瘍(MRTK)は乳幼児の腎に発生する稀少な難治性腫瘍である.現在,MRTKに対する標準治療法は確立されていない.放射線療法の有効性についてのエビデンスはなく,その役割は明らかにされていない.難治症例の放射線療法の経験から,MRTKの局所制御のためには高線量照射が必要で,乳幼児に対して放射線有害事象を回避しつつ高線量照射を行うためには,陽子線治療が有効な選択枝の1つであると考えられた.MRTKの治療成績の向上に向けて,SIOP-RTSGでは中枢神経以外のMRTを包括登録しているEU-Rhabdとの共有プロトコールを提唱していること,SIOPとCOGで放射線療法に関してほぼ同等の治療適応と治療線量を設定していること,JCCG腎腫瘍委員会でSIOP国際共同研究に参加を表明していることなど,広い視点にたった臨床研究が進み始めている.今後,多方面からのMRTKに関する基礎データと臨床データが集約され,それらの解析のもとに有効な治療法が確立されれば,この難治性腫瘍に対する放射線療法の役割も明確となっていくと考えられる.

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© 2017 日本小児血液・がん学会
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