日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム6: LCH
ランゲルハンス細胞組織球症:トリプルファクターモデルの提唱
村上 一郎
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2017 年 54 巻 5 号 p. 320-328

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抄録

ランゲルハンス細胞組織球症は,ランゲルハンス細胞様異常細胞の増殖性疾患である.自然治癒する亜型・経過観察で良い亜型~死に到る亜型が存在する.かつて,これらの亜型は別の疾患として扱われていたが,病理組織像が同じである事から,一つの疾患名(ヒスチオサイトーシスX)で統一され,名称の統一を提唱したリヒテンシュタインは,起因物質の存在を予言していた.しかし,クローナリティの存在,RAS/MAPKシグナル伝達経路にBRAF変異が報告され,多くの研究者が腫瘍性性格を有していると考えるようになって来ている.一方,このBRAF変異のみで様々な亜型の病態を説明する事は困難で,炎症性因子とLCH亜型間に様々な関係性・相関性がある事も知られている.2014年,我々は,メルケル細胞ポリオーマウイルスがLCH発症に関わっている可能性を示し,「腫瘍原性形質を有する異常ランゲルハンス細胞が何らかのトリガーに過剰反応した疾患」との腫瘍性性格と反応性性格の両面の性格を有するとの説を提唱した.現在は,遺伝子変異,ストレス(何らかのトリガー)と言う2因子に,IL-1ループモデル等のストレス反応(過剰反応)を加えて,トリプルファクターモデルを提唱し,治療ターゲットとしても腫瘍性性格のみでなく,炎症性性格も考慮する事が治療効果を上げるのではないかと考えている.

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