2017 年 54 巻 5 号 p. 423-427
症例は8歳の女児で,腹部打撲後に撮像した腹部CTで2個の腹部腫瘤像を指摘された.開腹生検により,膵尾部に発生したsolid-pseudopapillary neoplasm of the pancreas(SPN)とその腹膜播種病変と診断し,膵体尾部切除術と腫瘤摘出術を施行した.以後,再発病変が出現する度に計4回の腫瘤摘出術を施行し,発症より約10年が経過した現在も長期生存が得られている.病理学的には原発病変,腹膜播種・遠隔転移病変ともに高悪性度を示唆する所見は認めず,WHO分類で“high-grade malignant transformation”とする亜型には含まれないと診断した.現在SPNは“low-grade malignant neoplasm”に位置づけられているが,腹膜播種・遠隔転移病変の有無よりは,組織学的な悪性成分の有無が予後を規定している可能性があると考えられた.