2018 年 55 巻 2 号 p. 153-158
ゲノム医療の実現化が国策として進められている中で,遺伝子変異情報をがんの早期発見や治療薬選択に利用しようという「がんゲノム医療」の動きが加速している.特に,次世代シーケンサーを用いた網羅的変異解析としてのがん遺伝子パネル検査は,近い将来での保険収載を視野に入れ,慌ただしくその準備が展開されようとしている.このような網羅的ゲノム解析データを扱う上で避けては通れない問題として,二次的所見・偶発的所見として同定される生殖細胞系列変異の取り扱いがあり,その対応の主役となる遺伝カウンセリングの役割に注目が集まっている.わたしたちは造血器腫瘍の分野での遺伝子パネル検査を支援する遺伝診療体制の構築を目指して活動している.遺伝カウンセリングの専門職である認定遺伝カウンセラーの慢性的な人的不足が解消されていないため,主治医やその他の職種も巻き込んだ包括的な遺伝カウンセリング体制の構築は喫緊の課題である.