2018 年 55 巻 2 号 p. 159-162
骨肉腫は,原発性悪性骨腫瘍の中で最も頻度の高い腫瘍である.かつてほとんど救命できない予後不良の疾患であった骨肉腫の治療成績は,多剤併用化学療法の導入により劇的に改善した.現在では世界的にも術前化学療法が標準となっており,Methotrexate,Adriamycin,Cisplatin 3剤によるMAP療法が標準レジメンである.術前から化学療法を行うことにより,切除標本を用いた組織学的腫瘍壊死率が算定でき,化学療法の有効性の判定が可能となる.術前化学療法が奏効したと判断されれば,術後においても同一レジメンが継続されるが,効果不十分とされた場合には,術後化学療法においてレジメンを変更する試みがなされてきた.しかし,欧米で行われた大規模比較試験EURAMOS1では,MAPによる術前化学療法の効果不十分例に対し,術後にIfosfamideとEtoposideを追加しても予後の改善は認められなかった.Japan Clinical Oncology Groupでは,MAPに対する効果不十分例において,術後化学療法でIfosfamideを追加する意義を検証する比較試験JCOG0905が実施されており,その結果が待たれる.近年,軟部肉腫に対しては新規薬剤が次々に登場しているが,骨肉腫に対しては長らく新薬が登場していない.既存の薬剤の組み合わせによる治療開発には限界があり,さらなる骨肉腫の治療成績の改善には,有効な新薬の開発が必須である.