日本小児血液・がん学会雑誌
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原著
過去10年間に当院小児がん患者から分離された真菌に関する検討
日野 もえ子石和田 稔彦青木 孝浩岡田 玲緒奈奥主 朋子大楠 美佐子渡邉 哲亀井 克彦下条 直樹
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2018 年 55 巻 2 号 p. 171-176

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抄録

小児がん患者では,真菌感染症が疑われる場合でも,真菌の分離同定はしばしば困難であり臨床経過により診断治療が行われることが多い.2004年1月から2014年12月までに当科で治療を受けた小児血液がん患者6人より分離同定された糸状菌2株,酵母5株に関し,薬剤感受性試験を行い,分離同定することの意義について後方視的に検討した.糸状菌はいずれも耳漏より検出された.1例では好中球抑制期間に外耳炎を繰り返し,Aspergillus terreusが同定された.薬剤感受性試験の結果よりミカファンギン(MCFG),ボリコナゾール(VRCZ)を併用し造血幹細胞移植を行った.酵母はすべてカンジダで,血液より分離同定された.Candida tropicalis分離例は治療開始後にβ-Dグルカンの上昇,脾膿瘍の悪化を認めたが感受性試験にてMCFG感受性良好であることを確認し治療遂行できた.C. parapsilosisC. glabrata分離例はいずれもMCFG投与下のブレイクスルー感染であった.MCFG感受性良好として知られているC. glabrataに関しては薬剤感受性試験の結果,キャンディン系薬剤に対するMICの上昇が確認された.近年米国でもキャンディン系耐性カンジダが問題となっており,今後小児がん患者においても,治療効果が思わしくない際には薬剤感受試験を行うことが必要だろう.

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© 2018 日本小児血液・がん学会
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