乳児巨大後腹膜奇形腫に対して,3D-CTによる側副血行路評価に基づいて術式を選択し,腎を温存しながら腫瘍全摘しえた2例を経験したので報告する.
症例1は3ヶ月の女児.巨大腹部腫瘤で発見され,術前3D-CTで左腎静脈が圧排,途絶していたが,卵巣静脈への側副血行路の発達が想定された.これらの温存のため腎門部を愛護的に操作し,全摘し得た.症例2は4ヶ月女児.3D-CTで下大静脈および両側腎静脈が途絶しており椎骨静脈叢への側副血行路を認めた.下大静脈および右腎静脈を術中切離して腫瘍を全摘しえた.両症例とも重大な術後合併症は認めず,腎機能も温存できている.
乳児後腹膜奇形腫では,臓器や重要血管が予想し難いほどの偏位を呈し,手術における致命的なリスクとなり得る.腫瘍と臓器の位置関係や,重要血管の走行を確認するうえで術前3D-CTは必須であり,側副血行路の発達に基づいた術式の選択が重要と考えられた.