日本小児血液・がん学会雑誌
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原著
小児がん診断後の二次性甲状腺がん:15病院のケースシリーズ研究
石田 也寸志前田 美穂岡村 純川口 浩史佐藤 真穂徳山 美香清谷 知賀子堀 浩樹小林 良二吉永 信治後藤 裕明藤本 純一郎黒田 達夫
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2018 年 55 巻 3 号 p. 261-268

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抄録

治療終了後の小児がん経験者の晩期合併症の中で生命予後に直接影響する最も深刻なものは二次がんであり,二次性甲状腺がんに関して検討した.

方法:研究デザインはケースシリーズ研究で,対象は1980年1月1日~2009年12月31日に15病院で小児がんと診断され,2010年3月31日現在の時点で2か月以上生存していた10,069人の中で,病理組織学的に二次性甲状腺がんと診断された症例である.その症例に関して二次調査で二次がんの詳細な臨床経過情報を収集した.

結果:二次性甲状腺がんは12例見られ,原発がんは,ALL3例,ホジキンリンパ腫1例,神経芽腫4例,骨軟部肉腫2例,脳腫瘍1例,その他(胸膜肺芽腫)1例であった.原発がん診断年齢の中央値は3歳(1か月~15歳6か月)で,男女比は4:8で女性に多く,甲状腺がんの病理診断は,乳頭状6例,濾胞性5例,乳頭状癌の濾胞性バリアントが1例であった.二次がん発症までの期間は中央値13年3か月(4年6か月~21年11か月)であった.11例で放射線照射歴を認め,造血細胞移植は5例で施行されていた.最終転帰時点で二次がん発症後も全例が生存し,11症例は無病生存であった.

結論:二次性甲状腺がん発症例は,濃厚な治療が大きなリスク因子になっており,今後甲状腺近傍の放射線照射歴あるいは難治・再発の移植症例においては甲状腺超音波検査によるスクリーニングが望ましいと考えられた.

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© 2018 日本小児血液・がん学会
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