日本小児血液・がん学会雑誌
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原著
IX因子活性に基づいた半減期延長型第IX因子製剤(エフトレノナコグアルファ)による定期補充療法の有用性
西村 志帆溝口 洋子下村 麻衣子笹木 忍小林 正夫
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2018 年 55 巻 3 号 p. 274-278

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抄録

半減期延長型第IX因子製剤による血友病B患者のquality of lifeの改善が期待されている.重症血友病B患者に対し,半減期延長型製剤(エフトレノナコグアルファ,rFIXFc)による定期補充療法に変更した4症例で,その有効性を検討した.症例1,2は高校,中学のテニスクラブで活動中の17歳と14歳の兄弟で,従来の遺伝子組み換え第IX因子製剤であるノナコグアルファ40 U/kgを2–3日に1回投与する定期補充療法を行っていた.rFIXFc に変更し,投与後のIX因子活性測定に基づいたクラブ活動時のIX因子活性を推測し,40 U/kgを4日毎投与に定期補充療法のレジメンを変更した.クラブ活動時のIX因子活性を10%以上に維持することで,出血を経験することなくクラブ活動を継続している.症例3,4は7歳と3歳の兄弟で,乾燥濃縮人血液凝固第IX因子を兄は44 U/kg,弟は33 U/kgを,週2回投与する定期補充療法を行っていた.rFIXFcへの変更に伴い,兄は56 U/kg,弟は42 U/kgを6日毎投与のレジメンとし,トラフ値を3%以上に保った.4症例すべてで注射回数を減少しつつ,変更前と比較して年間出血回数はほぼ0にコントロールすることができた.これらの結果から,半減期延長型製剤は,患者個々の生活スタイルに応じたIX因子レベルを維持し,注射回数の少ない定期補充療法として有用であると考えられた.

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© 2018 日本小児血液・がん学会
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