2018 年 55 巻 3 号 p. 279-283
精子保存が開始された2008年から2015年の間に当科で造血幹細胞移植を計画した移植時10歳以上の男性患者19例に対する精子保存の実施状況について後方視的に検討した.19例の年齢は10–27歳(中央値15歳)で,原疾患は血液悪性疾患8例,非悪性疾患11例であった.19例中10例が精子保存の説明を受け,うち7例が保存を試み,5例に実施された.骨髄破壊的前処置群10例中6例,骨髄非破壊的前処置群9例中4例が精子保存の説明を受けた.化学療法歴のある6例中3例が保存の説明を受けたが,いずれも移植直前の説明であった.今回の検討により心身ともに未熟な小児・若年成人患者への精子保存について様々な問題点が浮き彫りになった.今後は精液検査,挙児の有無,保存体制等を検討項目に含めた多施設による後方視的研究が必要と考えられた.