日本小児血液・がん学会雑誌
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症例報告
早期の想定が功を奏した急性骨髄性白血病の骨髄移植後に発症した播種性皮膚ムコール感染症例
棈松 貴成岡本 康裕中川 俊輔倉内 宏一郎児玉 祐一西川 拓朗田邊 貴幸新小田 雄一畠中 美帆義岡 孝子河野 嘉文
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2018 年 55 巻 3 号 p. 298-303

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抄録

播種性のムコール感染症は致死的な疾患である.早期診断が必要不可欠だが,生物学的指標物質はなく診断は困難である.我々は治療が奏効した急性骨髄性白血病に合併した播種性皮膚ムコール感染症例を経験した.治療による骨髄抑制や原疾患の悪化に伴う重症の好中球減少や単球減少,血液悪性疾患,骨髄移植症例であったこと,輸血による鉄過剰状態であったこと,ボリコナゾールの先行投与があったことなど多数のリスク因子に基づき,ムコール感染を想定して確定診断前にアムホテリシンBの投与を行った.皮膚病変は外科的切除なしに改善した.血液悪性腫瘍の診療の現場において,ムコール感染症のリスク因子の理解に基づいた迅速な治療が必要不可欠である.

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© 2018 日本小児血液・がん学会
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