2018 年 55 巻 3 号 p. 304-308
両側性Wilms腫瘍の治療では腎機能温存が重要である.当院で経験した2例で術前化学療法を行うことで両側の腎温存が可能であったため,文献的考察を加えて報告する.症例1は1歳の女児で,両側腫瘍生検を行った後に,症例2はWAGR症候群を背景に持つ2歳の男児で,現行のプロトコールに従い,生検を行わずに,腫瘍切除前に化学療法を先行させ,画像検査で経時的に腫瘍体積の縮小度を評価した.腫瘍の縮小が得られたとしても,縮小率が不良となった時点で両側腎温存手術を行った.術前・術後の腎静態シンチグラフィーを行い,腎機能予後の評価を行った.治療後は2例とも無病生存と腎機能温存が得られている.両側Wilms腫瘍の治療では腎温存を目指し,術前化学療法による腫瘍の経時的縮小度と術後の腎機能予後を評価することが重要である.