2018 年 55 巻 3 号 p. 309-314
腎芽腫の3歳女児に対してdoxorubicin(DOX)を含む術後化学療法と全腹部照射10.5 Gyを施行した.治療開始25週目(DOX累積投与量116 mg/m2)に多呼吸,SpO2低下を認め,胸部レントゲンで著明な心拡大と肺門部のうっ血像・胸水貯留,心臓超音波検査で左室駆出率低下(36%)を認めた.急性心不全の診断の下,水分制限に加えてdobutamine,olprinone,human atrial natriuretic peptide,furosemide投与により心不全症状は改善した.原疾患治療終了から9ヶ月経過し,enalapril,carvedilol,furosemide内服により心機能は改善し,原疾患の再燃も認めていない.腎芽腫では発症時低年齢,心臓近傍への放射線治療など他のリスク因子を有する症例が多いため,DOX累積投与量が少ない症例でも重篤な心毒性を発症する可能性があることを念頭に置く必要がある.