日本小児血液・がん学会雑誌
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教育セッション1: 神経芽腫
神経芽腫の治療の変遷
家原 知子
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キーワード: 神経芽腫, リスク分類
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2018 年 55 巻 5 号 p. 352-354

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抄録

International Neuroblastoma Risk Group Risk(INRGR)が示され,リスクに応じた治療方針の決定が重要である.

低リスクの標準治療では手術治療が主体であり,一部の症例に対して低用量の化学療法が試行される.5年生存率は,88~100%と極めて良好である.我が国では合併症の軽減目的で画像診断から手術リスクを判断する試験が行われた.さらには,一部の腫瘍群に対して自然退縮を期待して無治療経過観察する試験が行われている.

中間リスク群については生検後に化学療法を試行し,腫瘍の縮小後に摘出を行うことが標準的である.中間リスク群は良好な予後が期待できることから,長期的合併症を防ぐために,治療軽減を図る治療開発が行われている.

高リスク群に対する治療は,寛解導入療法と,手術摘出および放射線による局所治療を行い,造血幹細胞移植を併用した大量治療を行うという集学的治療が標準的である.2000年代には各国でMIBG治療や分化誘導療法,免疫療法などを組み合わせた様々な臨床試験が組まれたが,その治療成績は5年生存率50%前後と改善はみられなかった.欧米からの報告では,大量治療後に,分化誘導療法とGD2抗体を含む免疫療法を施行することで良好な予後が示された.我が国ではレチノイン酸およびGD2抗体は未承認薬であり早期の承認が望まれるとともに,新たな治療薬開発が望まれる.

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