日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム2: 小児血液・がん患者に対する感染症対策~予防から治療まで~
免疫機能とvaccine-preventable diseases (VPD)
東 英一
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2018 年 55 巻 5 号 p. 355-365

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抄録

小児血液・がん患者の治療後や造血細胞移植後の二次性免疫不全状態においては種々の感染症に罹患する頻度が高く,時にその治療に難渋する場合も多い.その際,予防接種で防御可能な感染症(vaccine-preventable diseases,以下VPD)への対策が肝要である.とりわけ移植後は移植前に自然感染や予防接種によって得られた免疫能が経年的に低下もしくは消失するために予防接種によって発症の予防または症状の軽減が期待できる場合はその実施が推奨される.

二次性免疫不全状態でのワクチン接種の時期と種類を決定するにあたっては,移植後の免疫学的再構築がどの時期に認められるのかが重要である.予防接種時の免疫抑制剤(特に,副腎皮質ステロイド)投与の影響について最近の世界の動向について記載した.また,ワクチン接種前後の効果判定の基準については,ワクチン接種後の感染防御能と相関する免疫学的指標(Correlates of Protection,以下CoP)として抗体価測定が使用されているが,CoPには液性免疫,細胞性免疫,粘膜免疫が含まれており,抗体価のみで判定することの臨床的有用性が限定的であることを考慮する必要があることを記載した.最後に,治療後に抗体が失われた小児へのワクチン再接種費用の公的助成が各地で拡大していることについても言及した.

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© 2018 日本小児血液・がん学会
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