2018 年 55 巻 5 号 p. 393-397
小児がん患者は,身体的,心理的,社会的課題を抱え治療後も生活をしていく.小児がんへの対策として小児がん拠点病院の指定,小児がん相談支援センターや長期フォローアップ外来の設置等,小児がん患者・家族を取り巻く療養環境はここ数年で一足飛びに向上した.治療後の長期フォローアップ外来は,小児がん患者にとって心身の状況確認の機会であり,問題が発生した際の相談支援の窓口でもある.
長期フォローアップの両輪の一つである相談支援は,病気に関する問題から派生する様々な心理社会的問題に対応する役割を持ち,主に小児がん相談支援センター小児がん相談員がその役割を担う.その対応は,小児がん患者が自らの病気を受け止め,自らの力で課題に対応する力を身につけるために,発症からその後を見据えトータルな教育的関わりが重要であり,病気を受け止め前進するために同様の体験をした仲間との病体験の振り返りも重視すべきと考える.
医療スタッフや小児がん相談員の関わりの成果により,守られている存在である「小児がん患者」から,病気や後遺症,発生した課題・問題を受け止め,対応する力をつけた「小児がん経験者」へのシフトチェンジにより,自己実現を達成する人生を歩んでいくことを期待する.