日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム10: 組織球症:最近の話題(教育セッション)
UNC13D遺伝子バリアント機能評価系の確立とmunc13-4蛋白発現解析によるFHL3スクリーニングの有用性評価
柴田 洋史八角 高裕
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2018 年 55 巻 5 号 p. 387-392

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抄録

血球貪食性リンパ組織球症(hemophagocytic lymphohistiocytosis: HLH)は炎症性サイトカインの過剰産生を基本病態とする致死的炎症症候群である.家族性血球貪食性リンパ組織球症(familial HLH: FHL)は遺伝子異常を原因とする原発性HLHの代表疾患であり,その治療に造血幹細胞移植が必須であるため,正確で迅速な診断法の確立が模索されてきた.FHL3型はmunc13-4分子をコードするUNC13Dを責任遺伝子とし,FHL全体の20–40%を占め,NK細胞やCTLの細胞傷害性顆粒の放出障害を特徴とする.我々は,FHL3型の迅速診断法としてフローサイトメトリーによる血小板内munc13-4蛋白発現解析法を開発し,本邦の患者診断に貢献してきたが,この方法の有効性の評価は充分に行えていなかった.そこで,当科で解析を行った108症例に対する遺伝性HLH遺伝子解析と蛋白発現解析の結果を検討したところ,UNC13Dの両アリルにバリアントを確認した15症例全例においてmunc13-4蛋白発現の低下が確認された.更に,FHL3患者より樹立した不死化CTL株を用いて既報告UNC13Dミスセンスバリアントの病原性評価を行ったところ,細胞傷害性顆粒の放出機能と細胞傷害活性がmunc13-4蛋白の発現と強く相関することが確認された.

以上の結果よりFHL3スクリーニングとしてのmunc13-4蛋白発現解析の高い信頼性が確認された.

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